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第2回地域運営組織研究事業
これからの地域のありかたについて
人々の活動範囲が広がり、価値観が多様化して、人はいろんな社会の縁に接して生活を始めています。会社の仲間、趣味・サークルの縁、学校を中心とした縁。最近では、インターネットを通じた縁もあります。地縁に限らずいろんな縁があることは実はとても大切です。しかし、社会が縮小している現代において、地域は、いやおうなしに行政の手から地域に帰ってきます。そんなとき、地縁型のコミュニティが育っていない地域は立ち行かなくなります。 昔の社会に戻るには無理があります。だから、今大切なのは新しい地縁社会です。それぞれの地域をどういうふうに結びつけて、どう運営していくか、そこに新しいアイデアが必要になってきます。地域で気持ちよく暮らすためにも、地域のみんなで考えていかないといけないと思っています。新しい地縁型社会をつくるための一つのヒントが地域運営組織といえます今日は今までの自治会がどういうふうに協力し合って、新しい地縁型の社会をつくり、地域の課題を解決していこうとしているのかお話しいただきます。(地域再生アドバイザー 浅見雅之さん) 事例報告 ①与布土地域自治協議会(朝来市)
将来のために、何もしないわけにはいかない
朝来市は、合併してすぐ区長や有識者を集めて分権型社会システム懇話会を開催し、将来の地域のあり方を検討し、協議会運営制度を決定しました。地域運営はなるべく地域でやろうという考え方でしたが、「行政は私たちに仕事を押し付けるのか」というような批判的な声もいっぱい出ました。そうではなく、「地域でできることを考えてください」というところから協議会を発足させ、財政支援と人的支援をしようということで包括交付金という補助金の制度を確立しました。 協議会の重点目標の一つが農業問題です。動物に乗っ取られ、草ボーボーの農村環境では、若者は帰ってきません。今、取り組もうとしているのは農地管理の集約化です。例えば、皆さんの家にある遊んでいる農機具や高齢で辞めていった大規模農家の農機具等を借り上げて、一つの組織でフル活用します。便利な農地は大規模農家に任せ、あとの小さい田んぼや埋もれていた農業財産をかき集め、地域の人材を広い範囲で集めて、地域全体で支えあうシステムを検討している段階です。 その他に、旧小学校で太陽光発電を行い、自主財源の確保に取り組んでいます。また、ゆうパックの事業や都市部への農産物販売もしていますが、スタッフ不足が課題です。いずれにしても、いろいろな事業に取り組みながら、何とか地域に多くの人が集まってもらえるように、これからも新たな発想の展開を行いながら頑張っていきます。 事例報告 ②西気明日のいしずえ会(豊岡市)
ここで暮らす幸せをもっと増やすために、できることを
豊岡市が進めている新しい地域コミュニティのコンセプトは、「自分たちの地域は自分たちでつくる」です。旧の地区公民館を単位に、今年度、29の地区コミュニティ センターが住民自治の拠点として生まれ変わりました。それぞれの地域組織には、地域振興、地域福祉、地域防災、人づくりの4つの機能をもつように組織をつくりあげています。 西気地区は、大正時代にスキー場が開かれ、一時期は大変な賑わいでしたが、景気の後退等により観光客も人口も減少し、スーパーやスタンドが閉鎖、小学校も閉校となりました。 小学校の閉校を機に、平成25年度に地区の区長会が中心となって、これからの西気を活性化していくための委員会を設立しました。分野ごとの課題解決に、すぐできることから、いずれはやってみたいことをまとめた「西気がっせえ化計画」というのを、約1年かけて策定しました。『おかえりなさい。ただいま。西気の風景や人にそんな声をかけあえるような“帰りたくなるような”地域を目指して』が目標です。やっぱり一人でも帰ってきてほしいというようなことから計画を策定しています。神鍋高原200円バスの利用促進、大根プロジェクト、お助け隊の「まごの手」事業、防災ワークショップ、西気ふれあいの集い、など様々な事業を行っています。大事なことは、役員に無理強いはしないこと。行き詰まった時、ダメという前にどうしたらできるかを考えることだと思います。また、スタッフが楽しいと思えることが次に繋がるエネルギーになります。 「西気明日のいしずえ会」は閉校した小学校の校歌の一節です。名前には地区の皆さんの熱い思いが込められています。次の世代まで我々の気持ちが繋がって、少しでも明るく住みやすい地区となるよう、みんなで力を合わせていきたいと考えています。 新たな地縁型社会を考えるきっかけに
ポイントがいくつかあったと思います。一つは包括交付金です。例えば、小学校区域のような地域全体に一括してお支払いするというような仕組みです。また、「地域のことを考えて地域のためだけに働く方を地域で雇う」みたいなことを考えたりする形です。
事例発表では、住民参加から協働へという話をしてくれました。町がやることに住民が参加するのではなく、町と住民が一緒になって事業を進めていく。地域を運営していくために、自分たちでできることは自分たちでやる。あるいは、自分たちの地域は自分たちでつくるという考え方が一つあります。あと、地域運営にかかるお金はできるだけ自分たちで生み出すみたいなこともあるのかなと思っています。与布土地域ではまだ自主財源を稼ぐまではいっていないようですが、全国では焼酎を作ったり、太陽光発電で収入を得たりして地域運営の資金を稼いでいる地域もあります。また、カフェやスタンドを経営している組織もあります。 新しい地縁社会のありかたとして、地域運営組織は一つのやり方です。これが一番正しい方法かどうかは、まだわかりません。でも、兵庫県内でこういう自治協議会、コミュニティ組織、地域運営組織の取組をしているところがいっぱいあります。新温泉町でもこの先、こうした組織を作っていくのか、もしくは違うやり方を目指すのか、みんなが考えていかないといけません。今回の事業が、私たちの地域ではどんな取組をしてこの地域を守っていけばいいのかを考えるきっかけになればいいかなと思っています。(地域再生アドバイザー 浅見雅之さん)
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