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諸寄の精霊船流し
毎年8月15日に、精霊船(盆船、サラエ船とも)を作ってお盆で迎えていた仏を送り出す行事です。かつて精霊船は初盆を迎える各家々が作っていましたが、現在は実行員会と地区の有志で一隻の船を作ります。15日夕方、地区内にある龍満寺の住職による読経により仏送りが始まります。初盆の家を中心に参加者は焼香を行ったのち、精霊船を浜まで移動し、初盆の家の手によって海に流されます。以前は有志が海に入り途中まで精霊船を曳いていましたが、現在は最初から船で曳航し、ひとしきり湾内を巡ります。 諸寄の精霊船は、かつて麻の殻(オガラ)で組み上げていましたが、現在は木製の小型船を土台に使用しています。精霊船の帆には、「南無釈迦牟尼仏」と墨書され、初盆を迎える仏の戒名が記されています。船の前後には提灯を掲げ、側面には各家から持ち寄られた戒名等を記したお札が飾り付けられています。加えて初盆の家は花を飾りますが、かつては団子やお菓子、精霊棚のお供えなどのほか、新仏の数だけ10センチメートル程度の人形を載せていました。現在では花以外は乗せていません。 過去に行われていた精霊船流しは、初盆の家が一軒ごとに船を用意し、海に出した船はそのまま沖へ流していました。その後、船に使用する材料が変化し海中に沈みにくくなったことや、環境に対する認識が変化したこともあり、祭りの翌日に船の飾りを外し、土台の船部分を翌年また使用する現在の形になりました。社会の変化によりその姿を変化させつつも、地区の人々の手によって守られてきた但馬地方の貴重な盆行事のひとつです。 (令和4年9月1日 兵庫県登録無形民俗文化財)
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