29・とうがらし粉(佐治谷の阿呆ばなし)
佐治谷の阿呆が、妻の言いつけで、鳥取の街に布団を買いに出た。
腹がへったので、うどん屋に入って、うどんを注文した。
先客がいて、うどんにとうがらしをかけていたが、竹筒のしりを、とんと叩くと
栓がとんで、うどんが赤くなるほどとうがらし粉が出た。
「しまった」
と、男が言って、一口食べ
「ワアァ、コリャ熱い、ロの中がほかってくる。寒いときにゃあ、何ていったって、こうするのが一番ぬくもる」
と、やせがまん言いながら食っている。
『本当かな?』と、自分もやってみると、なるほどロが痛いほどあつかった。
それで、布団よりこれにしようと、布団代で、とうがらし粉を、しこたま買って帰った。
※参考文献
喜尚晃子 「但馬・温泉町の民話と伝説」1984年より
温泉教育研究所 「温泉町郷土読本-温泉町誌-」1967年より
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