20・きじ
樵の爺さんに、早くお弁当を届けようと、練餅の包みを背中に、婆さんが山道を急いでいると、
突然、頭上で、
「ケン、ケン、バタ、バタ、婆のお尻にすいつきたい」
と大きなきじの鳴き声。
婆さんは腰が抜けるかと思うほどびっくりした。
ヒイヒイ言いながら、やっとこさで坂道をかけ上がって、爺さんのところへ辿り着き、先刻の話をすると、
「そのときはな、『すいつきたきゃ、すいつけ。銭や金が、すいつけ!』と言ってやれ」
と教えてもらった。
帰り道、先刻(さっき)の所へ差しかかると、またもや、
「ケン、ケン、バタ、バタ、婆のお尻にすいつきたい」
と、きじが鳴いたので、ここだと婆さんが声を張り上げた。
「すいつきたきゃすいつけ。銭や金がすいつけ-」
言ったとたん、婆さんは尻もちをついた。重くて動けぬはど、お尻に銭や金がすいついたからである。
それから爺さん婆さんは楽な暮しができるようになった。
この話を聞いた隣の爺さんは、婆さんを山にやり、大金持になろうと思った。
ばあさんは、じいさんに教えてもらったとおりに、きじが鳴くと、
「すいつきたきゃすいつけ。何でもかんでもすいつけ!」
と、どなったら、石ころや朽木や、瓦のめげまですいついた。
婆さんはその場にへたりこんで動けんようになった。
※参考文献
喜尚晃子 「但馬・温泉町の民話と伝説」1984年より
温泉教育研究所 「温泉町郷土読本-温泉町誌-」1967年より
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