37・温泉城
豊臣秀吉が勢力を伸ばすために、かたっぱしから城を攻めていたときのことだ。
秀吉の軍がとうとう湯村城にも迫り戦いが始まった。しかしなかなか湯村城は落ちない。
秀吉は
「このままでは、こちらの軍が疲れてしまう。何かいい考えはないものか」
と、悩んだ末、兵糧攻めをすることにした。それでもなかなか落ちない。
調べてみると、城には飲み水がどこからか引かれている。
秀吉は侍を坊さんに変装させ、中山のあたりにある茶屋に行き、
「おばあさん、ここらは水がたくさんあってきれいですねえ、いったいこの水はどこから出てくるんですか」
と、さりげなく話しかけると
「ああ、それなら『宴の清水』という所から出てくるんですよ」
と、おばあさんが答えた。
それで秀吉は兵糧攻めに加えて水源を絶ち難なく湯村城を落としてしまった。
後の人は、どうやってあんなに高いところの城に水を引いたのかと不思議がったが、それは今でも謎である。
※参考文献
喜尚晃子 「但馬・温泉町の民話と伝説」1984年より
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