新温泉町
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36・坂本しんざえもん

昔、鐘尾の村は因幡への抜け道があった。
ある年、一人の侍が村へまぎれこみ坂本口というところに住みつき、百姓をおどしては米やお金を取るなど村人を困らせた。
村人たちはなんとかして悪いことをやめてもらいたいと思ったが、
相手が侍なので、みんな刀で切られるのが恐ろしくて言われるままになっていた。

ある日、庄屋さんからふれがまわって

「今日一日は雨戸を閉めて家に居るよう」

と、いうので、村人たちは一体何事かと家で一日中寝ていた。
ところが、ある一人が雨戸のふし穴からのぞくと、馬に箱を積んだ坂本しんざえもんが岸田川を渡って
鐘尾村から愛宕(あたご)山に向かって行くのが見えた。

村人たちは、坂本しんざえもんが村人からおどし取った金銀を埋めに行ったのだろうと噂した。
村人たちはみんな坂本しんざえもんを恐れていたので、
村のために悪侍の坂本しんぎえもんを殺して平和を取り戻そうと秘密のうちに相談がまとまった。

村人たちは知恵をしぼり、庄屋の池の前に風呂をつくった。
使いの者に、

「新しい風呂ができましたけえ、どうぞ一番に入ってくんなれ」

と、しんざえもんを迎えにやると喜んでやってきた。
庄屋に刀をあづけ、しんざえもんはいい気分で風呂に入り、

「おい、湯がぬるい、もっと焚け、もっと焚け」

と、言うので、かねての手配どうり、村人たちは、

「へえへえ、もっとかな」

と、言いながらどんどん薪をくべ、時を見計らってみんなでかけ寄り風呂に大きなふたをし、石を乗せると、

「熱い熱い、熱いぞ、石をおろせ!」

と、中でしんざえもんが叫んだ。
村人たちは、

「悪侍め、よくも村の者をいじめたな!」

「お前のような悪侍は死んでしまえ!」

と、口々に叫びながら石ぶたを押える者、薪をくべる者、みんなで力を合わせた。
しんざえもんは死にものぐるいで、やっとふたを押し上げ石を引っくり返し風呂の外に転がり出て、

「熱い熱い」

と、うめきながら近くの池に飛びこんだ。
が、

「人を蒸し殺してこのばちあたりめ! この村はどこまでもはんじょうせんよう呪ってやる!」

と、言って死んでしまった。

あくる年、鐘尾の村に疫病がはやって村人が次々に死んでいった。

村人は、

「これは坂本しんざえもんのたたりだ」

「あんなむどい殺しかたをしたたたりだ」

と、おそれ

「しんざえもんの霊をまつってなぐさめねば・・・」

と、神主をよんで霊をまつり、記念に杉の木を植えた。

現在、多類神社境内の下、石段の横手に、坂本しんざえもんの杉というのがあり、
ご神木として村人に祈念されている。

   ※後日の話に‥・…
   明治の初めに寺をこわして神社を盛んにして行きましたが、牛ケ峰山でも、
   寺をこわして神社をたてたそうです。
   その時、こわした寺のむな木に、坂本しんざえもん金一両と書いてあった事実を、
   鐘尾の竹中正龍さんが見たと言い伝えられています。

※参考文献
 喜尚晃子 「但馬・温泉町の民話と伝説」1984年より


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〒669-6792 兵庫県美方郡新温泉町浜坂2673-1
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