7・蟻の目
夏のさかり、暑い日だった。
小さい小さい赤蟻が梨の木の下を歩いていると、大きな実がどたんと落ちてきて、どろどろ転ん
で、蟻の目に入った。
さあ、大変。
小さいごみが入ってさえ痛くてしようがないのに、小さな蟻の目に大きな梨が入ったのだから、
蟻は痛がって、ワンワン泣き出した。
親が駆けつけてきたが、どうすることもできない。
近所の蟻たちも集まって、金梃子で動かそうとしたが、やはり動かん。
そのうちに赤蟻が右往左往して大変な騒動になった。
金挺子が何挺も集まって「よいや、よいや」と声をそろえてこじ、大縄を梨の実にかけて、大勢で引っぱったら、
さしもの大きな梨も、ごろんと転がり出た。
両親は大よろこび。
その梨を切って、世話になった人にくばって礼をした。
※参考文献
喜尚晃子 「但馬・温泉町の民話と伝説」1984年より
温泉教育研究所 「温泉町郷土読本-温泉町誌-」1967年より
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