新温泉町
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14・盆皿や

昔、むかし、ある家に、二人の娘があった。
姉は継子(ままこ)だが器量も気立もよく、それに利発だったが、
妹は継母に似たと見え、器量が悪く、その上、意地悪で利口でなかった。

継母は我が娘の方をかわいがり、姉をことことくいじめていた。
あるとき、伯耆の国の若殿さまが、大勢の家来をつれて鷹狩に来て、その家で休んだ。

継母は自分の娘にい一張羅の着物を着せて、
「さあ、このお茶を若殿さまに持っていくんだよ」
と、いそいそと娘を給仕に差し出した。継子の姉にはきたない着物を着せたまま、家来たちにお茶をついで廻らせた。

若殿が帰ってしばらくすると、お城から使いが来て、姉娘に出仕するようにという。
継母は、これが姉ですといって、妹の方を押しやると、家来は花嫁を乗せる駕籠の中から、盆の上に皿をのせ、
皿の上には雪をのせ、その上に松の小枝を差したのを取り出して、
「これを見て、歌を一首よんでみよ」と命じた。

娘はしばらく考えて、
「ぼんの上にさら、さらの上にゆき、ゆきの上にまつ」
と下手な字で短冊いっばいに書いて差し出した。
それを見ると、家来は妹を呼んでまいれと、本当の姉娘を呼ばせ、妹娘と同じように短冊を渡した。
姉娘はすぐ筆をとって、さらさらと書いて差し出した。

家来が手にとってみると、水茎の跡も美しい文字で、

「ぼんさらや やさらが岳に 雪ふりて ゆきを根として そだつ松かな」

としたためてあった。

「おお、こっちの娘御こそ、若殿にふさわしい」
と、家来たちはさっそく駕籠に姉娘を乗せて帰りはじめた。

怒った継母がそばにあった箒を駕籠めがけて投げつけると、姉娘はにっこりと笑って、

「いつまでも、親という字の 有難さ伯耆へまでもおくりくださる」
※参考文献
 喜尚晃子 「但馬・温泉町の民話と伝説」1984年より
 温泉教育研究所 「温泉町郷土読本-温泉町誌-」1967年より

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