19・辻坊主
節季のあわただしさはどこの家も一緒だと思いながら、
正月の買物に浜坂に出る男が、子の刻に砂見坂を通ると、
道端の石に腰をかけた大坊主が、ぱらりぱらりと帳面をめくっている。
「ははぁ-、早や掛け集めがきて、帳面をめくりよるわい」
と行きすぎて、ふと気づき、
「はてな、この暗いのに帳面の字が、よう読めるわいな」
と振り返ってみると、もう大坊主の姿はなかった。
夜中に一人旅すると、時々イタチが大坊主になって辻に出るという。
※参考文献
喜尚晃子 「但馬・温泉町の民話と伝説」1984年より
温泉教育研究所 「温泉町郷土読本-温泉町誌-」1967年より
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